「デーモンコア」と検索すると、丸い玉のイラストやキャラクターなどがヒットすることがあります。
その見た目に「かわいらしい」と感じる人もいるでしょう。
しかし、本物のデーモンコアはかわいらしい代物ではなく、非常に危険な物です。
では、デーモンコアとは一体どのようなものなのでしょうか?
また、デーモンコアにはどのような危険があるのでしょうか?
目次
全然かわいい物ではない!デーモンコアとは?
その輝き、超弩級!? 『デーモン・コア』にまつわるパロディイラスト特集https://t.co/uCoGAsikdw pic.twitter.com/V7ehKSG4ya
— ニコニコニュース (@nico_nico_news) January 29, 2020
デーモンコアはかわいらしくイラスト化されることがあります。
しかし、本物のデーモンコアはかわいらしい物ではなく、非常に危険な物です。
では、本物のデーモンコアとは、どのような物なのでしょうか?
※本記事では厳密性よりも、わかりやすさを重視したざっくり解説をしています。
デーモンコアってどんな物?

デーモンコアの見た目は、球体の金属のような物です。
ただし、その球体は真っ二つにされていて、中にはくぼみがあります。
そのくぼみにある物質を入れて、真っ二つにした金属を重ね合わせることで、中にその物質を閉じ込められる仕組みとなっています。
これら外側の球体の金属と、中に入れられた物質を合わせた物がデーモンコアです。
また、球体の中に入れられた物質の塊のことだけを指す場合もあります。
外側の球体の金属はベリリウムで作られています。
ベリリウムとは、軽くて熱に強い特徴を持つ金属であり、レントゲン撮影やスピーカーの振動板などに必要な物です。
また、有毒性があるので扱いには十分な注意しなければなりません。
しかし、デーモンコアが危険なのはこのベリリウムの方ではなく、閉じ込められる物質の塊です。
それはプルトニウムの塊であり、重さは6.2kgもあります。
長崎に落とされた原爆には約6kgのプルトニウムが積まれていました。(ただし、爆発の反応を起こしたのは約1kgとされている)
これだけでデーモンコアの恐ろしさは理解できるでしょう。
デーモンコアは何に使う?

デーモンコアは核分裂の実験に使われていました。
核分裂とは、プルトニウムやウランなどが中性子を吸収して、原子核が2つ以上に分裂する現象のことです。
原子核が分裂する際には大きなエネルギーが放出されて、2個~3個ほどの中性子が飛び出します。
その飛び出した中性子が他の原子核を分裂させ、また中性子が飛び出すという連鎖が起こります。
この連鎖を継続させ、放出されたエネルギーで発電することが原子力発電の仕組みです。
また、核分裂の連鎖が続いている状態を臨海と呼びます。
デーモンコアでの実験方法はシンプルで、上部と下部のベリリウムが完全に接触してプルトニウムを閉じ込めないようにマイナスドライバーを差し込んで隙間を作ります。
ベリリウムの隙間が小さいほど、核分裂によって飛び出した中性子が外に逃げにくくなるので、プルトニウムが核分裂の連鎖を起こしやすくなります。
ただし、ベリリウムを完全に閉じると内部で急速にプルトニウムが核分裂してしまうので非常に危険です。
デーモンコアの実験では、マイナスドライバーでベリリウムの隙間を調整して、どれだけの隙間を作れば、どれだけの核分裂が起こるのかを調べていました。
デーモンコアの青い光とは?

核分裂をコントロールして発電することがざっくりとした原子力発電の仕組みです。
その原子力発電では、たびたび臨界事故が起きてニュースとなっています。
臨界事故とは、意図せずに臨海状態となり、大量のエネルギーを放出させてしまうことです。
その際には、X線やガンマ線が発生し、周囲の空気に影響を与えることで青い光が発生します。
核分裂による青い光はチェレンコフ光と呼ばれて有名です。
ただし、チェレンコフ光は水のような透明な物質内で見られる光であり、空気中で見られる青い光とは発光の仕組みは異なります。
デーモンコアの実験でも臨海事故が起きていて、その際には空気中で青い光が見られたと言われています。
デーモンコアの臨界事故

デーモンコアを使った実験でも、臨海事故が2回起こっています。
では、デーモンコアの実験ではどのような事故が起こったのでしょうか?
1回目の事故

デーモンコアの1回目の事故が起こったのは1945年です。
このときはベリリウムでプルトニウムを覆うのではなく、炭化タングステンという物質のブロックをプルトニウムの周りに積み重ねていくものでした。
ブロックで囲んで中性子が逃げにくくして、どれだけプルトニウムを囲めば、どれだけのエネルギーが出るのかを調べていました。
そのため、ベリリウムを使う場合と仕組みは大きく変わりません。
しかし、その実験をしている際に、誤ってブロックをプルトニウムにぶつけてしまいます。
衝撃を受けたプルトニウムは急速に核分裂を起こして、大量の放射線を発生させました。
実験担当者はその放射線を大量に浴びたことで被爆し、25日後に急性放射線障害で亡くなりました。
2回目の事故

1946年に2回目の事故が起きます。
このときに行われた実験方法が、ベリリウムにマイナスドライバーで隙間を作るものです。
実験では隙間を小さくしていき、どのくらいの隙間があれば、どれほどの放射線が発生するのかを調べられました。
しかし、実験中に誤ってマイナスドライバーが外れてしまいます。
プルトニウムを完全に閉じ込められてしまったことで核分裂が急速に進み、大量の放射線を発生させました。
実験担当者はその放射線によって被爆し、9日後に亡くなりました。
デーモンコアがネットで話題?

デーモンコアはプルトニウムの塊であり、実験で死亡者が出ているほど危険な物です。
しかし、そのデーモンコアはイラスト化されて、ネットで見かけるようになったようです。
では、イラスト化されたデーモンコアとは、どのようなものなのでしょうか?
デーモンコアくんとは?
デーモンコアくんのLINEスタンプできました~!
みんなもデーモンコアくんスタンプを送って相手の気を狂わそう!https://t.co/LLOTXlXx2p pic.twitter.com/WydCc4urHo— からめる (@purinharumaki) June 28, 2019
デーモンコアくんとは、からめるさんが作成した短編アニメ「輝け!デーモンコアくん」に登場するキャラクターです。
デーモンコアくんはデーモンコアのベリリウムの実験方法をモデルにして作成されています。
口が閉じると核分裂を起こして青い光を発したり、口にはドライバーが加えられたりなどしています。
モデルがデーモンコアなので一部からは不謹慎という声もありますが、人気のあるキャラクターです。
現場猫も扱った?
唐突にRTで回ってくるデーモンコアとチェレンコフ光と現場猫に笑う pic.twitter.com/5YKH7Eo6pp
— sweat in the sky (@not_dry_3825) September 17, 2019
ヘルメットを被って「ヨシ」でおなじみの現場猫でも、デーモンコアを扱った作品があるようです。
ベリリウムにドライバーを差し込んでいる現場猫でしたが、「あ!!」と言った後に青い光に包まれてしまいます。
手元がしっかり確認できていなかったのでしょう。
こちらも一部からは不謹慎という声もありますが、現場猫の人気もあって作品として楽しんでいる人が多いようです。
デーモンコアは想像以上に危険な物

かわいくイラスト化されたデーモンコアは危険性が感じられません。
しかし、本物のデーモンコアはプルトニウムの塊であり、非常に危険な物です。
実際に実験によって亡くなっている人もいます。
イラスト化された物を作品として楽しむことは悪いことではありません。
ただ、本物のデーモンコアのことも知識として少し知っておくようにしましょう。